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ヤマちゃんといっしょ。13(パラレル注意)
ヤマちゃんといっしょ。13(パラレル注意)
「月の下であいましょう」
立て付けの悪い木戸を開けると、冬の匂いを纏った空気が月明かりとともに流れ込んできた。
部屋から一歩踏み出すと、外気に晒された床板から這い上がってくるような冷たさに身が竦んだ。
凛とした冷気に肌寒さを感じて、肩にかけた羽織りに袖を通しながら、冷えた縁側に腰を下ろす。
弱々しく届く細い月明かりの下、自分以外の人影はない。
屋敷を囲む垣根の向こう側にも、野良犬のうろつく気配もなかった。
刻限は、世にいうところの丑三つ時。床に就いていない方が珍しい。
それでももう一度警戒を強めて周囲を見回し、彼は、膝に置いた書物にそっと触れた。
質の悪い紙を束ねただけの、装丁もこれといった特徴のない古びた本。
表紙には題名も書いてはいない。
今にも解けてしまいそうな細い紐で綴じられた表紙に手を掛け、慎重に開く。
すぅ。と、空気が頬を撫でた。
それはまるで、古書自身がため息を吐いたかのよう。
パラパラと勝手に捲れはじめ、何かを探すように一頻り頁を往復した後、ぴたりと動きを止めた。
文字も何も書かれていない、空白の頁。
「出て来ても大丈夫ですよ」
彼が膝上の書に小さく声を落とすと、それに答えるように頁がぼんやりと光り出した。
光は本から抜け出し小さな光球となり、彼の周りを遊ぶように二度ほど回ったあと、じわりと形を変えた。
霞んだ淡い光の中に現れたのは、くせのない、柔らかそうな黒髪の少年。
「おはよ、タケ」
パラリと前髪を揺らし、少年は穏やかな笑顔を見せた。
「おはようございます」
タケと呼ばれた「彼」も、同じように少年に笑いかける。
 
月に一度きりの二人の逢瀬は、いつもこうして始まる。
 
 
 
 
 
なんかそんなカンジの話がかきたかったんだ。
 
 


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